〜第二章〜

正しい休日の過ごし方(1)


「たのしいなぁ〜♪うれしいなぁ〜♪」

とてつもなく能天気に由美子は言った。

きっと彼女の頭の中は温泉で出来てるに違いない。

きっといい感じにほかほかで、冷めることをしらない特異体質なんだ。

今井 貴冬はそんなことを考えていた。なんとも失礼である。

「元気だなぁ…」

「貴冬はうれしくないの〜?私は〜とぉ〜ってもうれしいよ〜♪」

ニコニコ笑顔に思わず視線を外してしまう。

ほのかに赤らんでいるのは無論、彼の女性に対する免疫の所為である。

「ずいぶん仲が良くなったね二人とも。羨ましいなぁ〜」

今は眠気が取れているのか、香織が笑いながら言ってきた。

どうやら彼女は面白いものにはまず顔を突っ込むと言うたちらしい。

何か事あるごとに寝てるけど…(汗)

「そうだよ〜♪私と貴冬はらぶらぶなんだよ〜♪」

「らぶら!?」

もちろん声を上げたのは貴冬本人である。

そりゃもうゆでだこのように顔を真っ赤にしながら。

「えぇ〜、いいなぁユミは。私も貴冬君とらぶらぶしたいなぁ〜」

「んな!?」

不意に、由紀はそう呟いた。

そんな言葉がピンポイントで貴冬の心を打ち抜く。

説明しよう。彼は女の子に免疫がないのである。

「あぁー。私も私も〜!」

「あの、私も…」

「うぇぇ!?」

それに続けて、美奈子と真美が言う。

もはや爆発寸前と言えよう、彼はもう一度言うが、女の子に免疫がないのである。

し、しんぞ!?どっく!!湯気!湯気!し、死ぬ!?

顔が耳まで真っ赤になり、心臓は大きく鳴る。

周りから見ればたいそう面白く見えるものの、彼にとっては生き地獄である。

そんななか、一人だけつまらなそうに…

「…ばか」

千恵美が小さく呟くのだった。










やっとのことで宿についた。

移動中、何度も彼女らにおもちゃにされながらも何とかこらえた貴冬は死人のように部屋に突っ伏すのであった。

「……も、ダメッス(汗)」

だめ、今日はもうダメ。死んじゃう。

部屋割りの時にも、一つ問題が生じた。

「私は貴冬と一緒の部屋がいいなぁ♪」

由美子の一言の所為で口論の口論。やはりゆでだこ状態にまで持っていかれる貴冬。

ホントカンベンしてくださいと土下座までする始末であった(汗)

…俺、旅行終るまで生きてられるのかなぁ?

そんな心配が、彼の心中を過ぎる。

…あ、温泉入ろう。

…どうやら無駄な心配のようだったらしい(汗)

彼は部屋に用意されていた浴衣もろもろを手に取り、そのまま部屋を後にするのであった。

頑張れ貴冬!キミのそのポジティブシンキングで何とかやり過ごすんだ!!


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